The Coming World 2075_Technology and the Sublime

Thursday, 11/2/2025 - Sunday, 16/3/2025

来たる世界2075
テクノロジーと崇高

ある未来都市では雨が絶え間なく降り続いている。大洪水は現在では何年も続き、人々の想像力や欲望を変え、無限に乾燥した砂漠を夢見ている。映画館では、バッハのコラール前奏曲によって描写される「ソラリス(Solaris)」や「ラ・ジュテ(La Jetée)」のシークエンスがループしている・・・ 「来たる世界」の断片的描写。「来たる世界」とは、私たちと自然との関係というテーマに真の緊急性を与え、気候変動、種の絶滅、汚染、再生可能エネルギー、人口過剰などの課題を浮かび上がらせる。私たちはこのように自然を明確に関係的な観点から考えることができ、それによって、自然に対する 超越的知識と日常的知識の両方の中で、新しい知識とテクノロジーを生み出すことができる。その結果、テクノロジーは、「来る世界」の自然環境に適応できる私たち人間の心身の変容をもたらすこととなる。

テクノロジーの驚異的な進化は、私たちが理解できる範囲を超え、しばしば「不気味さ」を伴う存在になりはじめている。 20世紀の心理学者ジグムント・フロイトが「不気味なもの」(The Uncanny)として言及した、見慣れたものが一変して異質に感じられる現象は、AIやバイオテクノロジーが日常生活に深く浸透する現代において、強く現れる美学的な主題である。 技術が人間のスケールや理解の限界を超え、引き起こす畏怖や不安を、本展では、「技術的崇高」と呼び、それを感じさせる現代アートを考察し、現代の美と畏れについて問い直そうとするものである。(高橋洋介/共同キュレーター)

マルティン・ハイデッガーの論文「世界像の時代」による考察は、現代をメディアと技術による支配が顕わになる表象の時代として捉え、メディア社会についての批評的思考を提示した。 人間が主体化する世界を表象のプロセスとし、表象として括られた世界を「世界像」と呼んだ。そして、近代的主観性がメディアを通じた共同性をたずさえたことによって、主観と客観が没入的に一致した全体主義的世界(「惑星的帝国主義」)へ向かうのではないかということを示唆している。 自由、人権、民主主義という「普遍的価値」を掲げた近代社会は、人間の際限のない欲望を肯定し、その欲望を原動力とする資本主義は今やグローバル化され、さらに国益をめぐる国家間の激しい競争にまで発展してきている。本展覧会では、現代におけるアポリア(解決の糸口を見いだせない難問)を前提に、新たなコミュニケーション間のプロトコルを起動させ、パブリックな意思決定のイメージに介入するアーティストたちのメッセージを発信する。


飯田髙誉(本展企画者/スクールデレック芸術 社会学研究所所長)
Ai Makita / Dynamic Equilibrium #b 2025
  • Daisuke Ida / Synoptes 2023
  • Andrea Samory / Chimera 1.1 2023
Ionat Zurr / ExUtero 2023
アンドレア・サモリー
1991年生まれ、イタリア出身。東京を拠点に活動。2017年イタリア・フェラーラ建築大学建築学修士号修了。インターネット以後の情報化された「自然と人間」をテーマに、神話的な作品を制作。主な個展に「Overgrowth」(Contrast、東京、2023年)など。主なグループ展に、「One Art Taipei」(2024年、台湾)、「Art Central HK」(2024年、香港)、「Generation(Z)」(2023年、イタリア)など。「99 Future Blue Chip Artists 2024」(ロンドン)最終選考選出。
井田大介
1987年鳥取県生まれ、東京都在住。2015年東京藝術大学大学院美術研究科修了。彫刻という表現形式を問いながら、彫刻・映像・3DCGなど多様なメディアを用いて、目には見えない現代の社会の構造やそこで生きる人々の意識や欲望を視覚化。最新の個展に「SYNOPTES」(2023、TEZUKAYAMA GALLERY)など。主なグループ展に「かさなりとまじわり」(2024,青森県立美術館)「遠距離現在 Universal / Remote」|(2024、国立新美術館)、「日本国憲法展 」(2023、 青山|目黒、東京)、「Grid Island」(2022、ソウル市美術館、韓国)など。
牧田愛
1985年千葉県生まれ。東京藝術大学大学院芸術学専攻美術教育研究科修了。東京とニューヨークを拠点に活動。絵画や映像など複合メディアによってAIと人間の創造性の交差を探究。近年の主な展覧会に「Tectonic Shifts」(The Something Machine、ニューヨーク、2022)、「Species」(六本木蔦屋書店ギャラリー、東京、2022)など。主な受賞に、ポーラ美術振興財団海外派遣助成、 オランダ王立アカデミー最終選考選出、岡本太郎現代芸術賞など。
イオナ・ズール
アーティスト/研究者。西オーストラリア大学デザイン学部美術学科准教授。1996年に培養工学の芸術表現プラットフォームThe Tissue Culture & Art Projectを立ち上げ、2000年に西オーストラリア大学(UWA)に国際的なバイオアートの機関SymbioticAをOron Cattsとともに設立。バイオアートの先駆者のひとりと見做され、その作品は、ニューヨーク近代美術館などに収蔵されている。最近の共著に『Tissues,Cultures, Art』(Palgrave McMillan, 2023)など。

「来たる世界2075
テクノロジーと崇高」

会期
2025年2月11日(火・祝) - 3月16日(日) / 11:00 – 20:00
※休館日: 2月17日(月)
会場
GYRE GALLERY丨
東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
お問い合わせ
0570-05-6990 ナビダイヤル (11:00-18:00)
主催
ジャイルギャラリー /
スクールデレック芸術社会学研究所
企画
飯田高誉
(スクールデレック芸術社会学研究所所長)
共同キュレーション
高橋洋介
グラフィックデザイン
乗田菜々美
意匠協力
C田VA(小林丈人+髙田光)
展示制作協力
Artifact
撮影協力
幸田森
PR ディレクション
HiRAO INC
展覧会出展作家
アンドレア・サモリー / 井田大介 / 牧田愛 / イオナ・ズール
PRESS CONTACT
HiRAO INC
東京都渋谷区神宮前1-11-11 #608
T/03-5771-8808|F/03-5410-8858
担当:御船、鈴木