SPECTRUM 2076 AD-来たる世界の意識体

半世紀後の未来から
現在 を逆照射する
実存的アート・
エクスペリメンツ

熊谷亜莉沙 ____ Say yes to me, 2025

展覧会概要

GYRE GALLERYでは、2026年5月22日より、キュレーター飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)の企画による展覧会「SPECTRUM 2076 AD ── 来たる世界の意識体」を開催いたします。本展は、気候変動やテクノロジーの特異点を経た「50年後の未来(2076年)」という視座から、現代という時間を遡及的に審問(Retrospective Inquiry)する思想的実験場です。出品作家には、池田謙、森万里子、山田晋也、名和晃平、牧田愛、草野絵美、熊谷亜莉沙の7名を迎え、物理的な光の分布としてのスペクトラムのみならず、ジャック・デリダが提唱した「憑存在(ハントロジー)」における亡霊(Specter)の多義性を探求します。池田謙の音響は、ベルクソン的「持続」を空間に充満させ、私たちの意識の輪郭を剥ぎ取っていく。森万里子は、垂直に立つクリスタルを通じて、宇宙的な全一性への「開かれた上昇」を提示する。山田晋也は、可視と不可視が交錯する重層的な絵画層のなかに、今も私たちを憑依し続ける亡霊の気配を定着させる。名和晃平は、物質を波動へと反転させ、実在の皮膜を「連続体」へと解体する。牧田愛は、機械的秩序を内面化した生体システムとして、ポスト・ヒューマンのトポロジーを描き出し、草野絵美は、AIという潜在空間から「存在し得なかった過去」を生成し、現実と虚構の境界を無効化する。そして熊谷亜莉沙は、沈底する文明の記憶を逆照射することで、現代という刹那に形而上学的な鎮魂を捧げる。
  • 名和晃平 ____ PixCell-Random (TBD)2024
  • 森万里子 ____ Peace Crystal Model, 2016-24
  • 草野絵美 ____ Ego In The Shell, 2025
  • 山田晋也 ____ Non duality Jun 07
  • 牧田愛 ____ No title, 2026
  • 熊谷亜莉沙 ____ Pool side, 2026

本展の核心 : 未来からの「遡及的な光」

絶え間ない大洪水に洗われ、クァンタン・メイヤスーが論じた「祖先以前性」のごとき、人間不在の冷徹な物質世界へと変貌した2076年。その沈黙の中で、未来の意識体はどのような「美」を見出すのか。我々はアートという触媒を通じて、現在という地点を未来からの遡及的な光で照らし出します。鑑賞者は、池田謙による身体感覚を攪乱する音響や、各作家が提示する重層的な視覚体験を通り抜けることで、自らが「未来から現在へと送り込まれた亡霊(スペクター)」であることを自覚する実存的な転移を経験するでしょう。本展は、ウィリアム・ジェイムズの「意識の流れ」をポスト・ヒューマンの領域へと拡張し、私たちが直面するハイパーオブジェクト(巨大な事象)への新たな倫理を提示する試みです。表参道の中心で展開される、この壮大な思想的ドキュメントをぜひご高覧ください。

森万里子

森万里子は、存在の根源的な問いを探求し、人類と宇宙の関係性を考察する作品で国際的に高い評価を受けるマルチディシプリナリー・アーティストである。先端技術と古代の象徴を融合させた大規模なパブリックアートやインスタレーションを通じ、精神的なつながりと生態系への意識を喚起し、自然・人類・テクノロジーの調和的関係を提示してきた。2003年発表の没入型インスタレーション《Wave UFO》により国際的注目を集め、2004年にクンストハウス・ブレゲンツ(オーストリア)、2005年の第51回ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)などで紹介された。2007年から2011年に欧州・南米・アジアを巡回した個展《Oneness》は、2011年にリオデジャネイロのブラジル銀行文化センター(ブラジル)で538,328人を動員し、同年世界最多来場者数を記録した現代美術展となった。これまでにロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ(2012年/英国)、ジャパン・ソサエティ(2013年/米国)、東京都現代美術館(2002年/日本)、ポンピドゥー・センター(2000年/フランス)、ブルックリン美術館(1999年/米国)、シカゴ現代美術館(1998年/米国)など、世界各国の主要美術館で個展を開催している。

池田謙

池田謙は、即興電子音楽家・作曲家として活動し、FMサイン波に独自の加工を施すことで電子音の揺らぎ、減衰、失跡のプロセスを即興的に顕在化させる作風で知られる。音の粒子そのものを摘出するようなアプローチを通じ、近代音楽の深層に潜む儀礼的霊性や身体性、さらには原初的な野蛮さの再発掘を試みてきた。聴覚体験を拡張する実践として、創作弦楽器やグラフィックスコア、譜面台を用いたインスタレーション展示も行い、音楽を視覚的側面から再考する試みを継続している。これまでに英国の**Touch、オーストラリアのRoom40、日本のSpekkなどから7枚のソロアルバムを発表し、国際的な評価を確立。また、David Toop、Carl Stone、Eddie Prevost、John Russell、Roger Turner**らとの共演・共同制作を行っている。さらに、杉本博司、横尾忠則、森万里子、田中泯、David Lynchらのプロジェクトにおいて、現代美術やモダンダンスのサウンドトラックを多数手がけ、領域横断的な活動を展開している。

山田晋也

1974年京都市生まれ。日本画と西洋画、仏教思想と現代哲学の接点に立脚し、存在の根源を問う芸術表現を行う。絵画を基軸に、空間インスタレーション、茶の湯、ストーリーテリング、サウンド、身体性を融合させた複合的な芸術体験の創出に取り組んでいる。2020年より、京都の禅寺・神社・文化財建築を舞台に「Pulse of Silence」プロジェクトを始動。建仁寺塔頭 両足院、貴船神社、京都国立博物館、スイスの教会空間など、国内外で展覧会を開催。2022年にはArt Collaboration Kyoto公式連携プログラムに採択され、日本仏教の母山・比叡山延暦寺においても展覧会を手がける。

名和晃平

彫刻家/Sandwich Inc.主宰/京都芸術大学教授。
1975年生まれ。京都を拠点に活動。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程彫刻専攻修了。2009年「Sandwich」を創設。感覚に接続するインターフェイスとして彫刻の「表皮」に着目し、セル(細胞・粒)という概念を機軸に創作を続ける。彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出してきた。近年では、アートパビリオン《洸庭》など、建築のプロジェクトも手がける。2015年以降、ベルギーの振付家ダミアン・ジャレとの協働によるパフォーマンス作品《VESSEL》《Mist》《Planet [wanderer]》《Mirage》を制作。2018年にフランス・ルーヴル美術館ピラミッド内にて彫刻作品《Throne》を特別展示。2023年、フランス・セーヌ川のセガン島に高さ25mの屋外彫刻作品《Ether (Equality)》を恒久設置。2026年現在、《Mirage》および《Planet [wanderer]》をヨーロッパ・アジアの各都市にて公演中。

牧田愛

牧田愛はキャンバスに油彩で絵画制作をしています。彼女の作品は、機械的なモチーフを用いることで、無機的な要素から有機的なイメージを生み出すことを目指しています。また、二次元のデジタルデータを基に、物質的で身体的な作品を創造することも彼女のテーマの一つです。特に、自ら撮影した金属やプラスチックなどの人工物を構成して、デジタル画像をキャンバス上の絵画として現実空間へ引き出すことを追求しています。最近では生成AIを作品制作に取り入れ、キャンバス絵画にとどまらず、ビデオやプリント、インスタレーションなど、そのスタイルは多岐にわたっています。テラダ・アートアウォード、岡本太郎現代芸術賞、ポーラ美術振興財団海外派遣助成、 Rijksakademie(オランダ王立アカデミー)ファイナリスト、ART CAKE (ニューヨーク)、The Fores Project (ロンドン)など、数々の賞や助成、レジデンスプログラムに選出されています。

草野絵美

1990年東京都生まれ。AIなどの新技術を制作に取り入れ、ノスタルジア、ポップカルチャー、集合的記憶をテーマに多領域を横断して活動するアーティスト。過去と現在の対話をレトロフューチャーな美学のもとに可視化することで、現代社会を捉え直す視点を投げかけている。M+(香港)、サーチ・ギャラリー(ロンドン)、グラン・パレ・イマーシフ(パリ)、金沢21世紀美術館などの主要機関や、Frieze、Paris Photoといった国際的なアートフェアを含め、世界20カ国以上で作品を発表している。そのキャリアの原点である原宿のストリートスナップは、ヴィクトリア・アンド・アルバート美術館(ロンドン)で展示された。 これまでに、SFの金字塔『攻殻機動隊』の公式アートプロジェクトや、クリスティーズとGucci、およびUNHCRとのコラボレーションオークション等に参加。世界経済フォーラム(ダボス会議)より、2025年に「ヤング・グローバル・リーダーズ」、2026年には「カルチュラル・リーダーズ」に選出された。東京藝術大学非常勤講師を経て、現在は文化庁文化審議会著作権分科会の委員を務めるなど、実践者の視点からAI時代における作家性や権利の在り方について議論を牽引している。また、音楽ユニット「Satellite Young」を主宰しSXSWに出演するなど、多岐にわたる表現活動を行ってきた。

熊谷亜莉沙

1991年大阪府生まれ。日本を拠点に活動。自身の複雑な生い立ちや抗い難い境遇と向き合い、そこに生じる矛盾や葛藤を絵画として昇華させる。極めてパーソナルな体験を起点としながらも、生と死、愛と憎しみ、貧富といった表裏一体の感情を、人間社会の縮図ともいえる普遍的なテーマへと拡張する点に特徴がある。遊郭街の裏でハイブランドを扱うブティックを営む家庭に育ち、その二重性は制作の重要な原風景となっている。学生時代より取り組む〈Leisure Class(有閑階級)〉シリーズでは、豪奢な柄のシルクシャツを纏う祖父を描き、顕示欲の背後に潜む体裁と内実の乖離を可視化した。父親の孤独死を契機に始まった〈Single Bed〉シリーズは、実際のシングルベッドと同寸で描かれ、複雑な愛憎関係や社会的断絶を静かに映し出す代表作となっている。描かれるモチーフは多岐にわたるが、作品には常にメメント・モリの思想が横たわり、個人のアイデンティティとその拠り所を問い続ける。近年はカトリック教会での学びを背景に、罪と贖罪、宗教と美、権力の構造といったより根源的な主題へと関心を深める。時に自作の詩を添えることで鑑賞者の記憶と交錯させ、内面的なカタルシスを喚起する表現へと深化している。国内ではギャラリー小柳などで個展を開催し、複数のグループ展にも参加するなど、活動の幅を広げている。

SPECTRUM 2076 AD
── 来たる世界の意識体

会期
2026年5月22日(金) – 7月12日(日)
会場
GYRE GALLERY | 東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
参加アーティスト
池田謙、森万里子、山田晋也、名和晃平、牧田愛、草野絵美、熊谷亜莉沙
お問い合わせ
0570-05-6990 ナビダイヤル(11:00-18:00)
主催
GYRE / スクールデレック芸術社会学研究所
企画
飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所 所長)
グラフィックデザイン
乗田菜々美
意匠 協力
C田VA(小林丈人+髙田光)
撮影 協力
幸田森
PRディレクション
HiRAO INC
協力
ギャラリー小柳、SCAI THE BATHHOUSE
PRESS CONTACT
HiRAO INC|東京都渋谷区神宮前1-11-11 #608
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