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  • 未来都市のメタファーとして
  • 都市のエフェメラと公共性
  • 闇こそ、都市の魅力である
  • 渋谷の未来の描き方

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100年に一度と言われる大規模再開発によって変容を続ける街をテーマとした「未来都市シブヤ エフェメラを誘発する装置」展。
多様な年代の6名のアーティストたちの作品は、鋭い批評性を伴って、渋谷という不思議な街の在り方を問いかけます。共通するのは、失われつつある混沌や闇こそが、美しく、必要な都市機能ではないのかという眼差し。

6名のアーティスト
  • 操上和美

  • 山口はるみ

  • 畠山直哉

  • 風間サチコ

  • 石川直樹

  • 友沢こたお

今展覧会はキュレーターの飯田高誉が、建築キュレーターである太田佳代子の共著書『SHIBUYA!ハーバード大学院生が10年後の渋谷を考える』と出合うことによって始まりました。二人の対談は、渋谷を座標にアートと建築を往還しながら未来への希望を提示し、展覧会を読み解くヒントとなるはずです。

  • 飯田高誉

    美術キュレーター。1956年、東京都生まれ。東京大学総合研究博物館小石川分館にて現代美術シリーズ(マーク・ダイオン、杉本博司、森万里子展)を連続企画。カルティエ現代美術財団(パリ)にてゲスト・キュレーション(杉本博司展、横尾忠則展)。京都造形芸術大学国際藝術研究センター所長、慶應義塾大学グローバルセキュリティ講座の講師などを務め、青森県立美術館美術統括監、森美術館理事、渋谷区立松濤美術館副館長を経て、現在、スクールデレック芸術社会学研究所所長。

  • 太田佳代子

    建築キュレーター、編集者。2015-2024年、ハーバード大学デザイン大学院特任研究員・講師、2018-20年、カナダ建築センター(CCA)特任キュレーター。2014年ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展日本館コミッショナー。2004-2006年、雑誌「DOMUS」副編集長・編集委員。2012年までオランダOMA-AMO勤務。共著書に『SHIBUYA!』、共訳書に『S,M,L,XL+』など。2022年日本建築学会文化賞。

1 : 未来都市のメタファーとして

どうして
渋谷の街を
企業が
マーケティング
しているのか?

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飯田

渋谷の再開発に関しては、元々、反対の立場なんですね。

太田

私たちの世代は、そうですよね。

飯田

私が子どもだった1960年代初頭は、まだ街としてそれほど機能していなかった。プレハブがあって傷痍軍人がいて、今のバスターミナルのあたりに白木屋という百貨店があったくらい。今回の再開発で東急本店が取り壊されて空が見えた時に、「どこかで見たことがあるな」って。幼い頃の思い出がなんとなく蘇ってきたんですね。リアルタイムで渋谷が変わっていく様子を60年近く見てきたわけです。数年前に私が渋谷区立松濤美術館に着任した際に、渋谷をテーマにした展覧会をやりたいと思ったんですが、その時には「今、なぜ渋谷なのか?」という切り口を見つけられなかった。けれど、太田さんがまとめられた『SIBUYA! ハーバード大学院生が10年後の渋谷を考える』を読んだ時に、すごく面白くて、ハッとしたんです。渋谷独特の再開発の、他の都市にはない方法論について指摘されている。単に渋谷の話ではなく、未来都市のメタファーとして渋谷を扱っていると思ったんですね。都市と建築の関わり方、アートとの関係性を考える点で、この本は今展覧会にとってすごく重要な本。それで、太田さんにお会いしに伺ったのが第一歩でした。

太田

私は2012年に長い海外生活の後に帰国し、日本にやってくるハーバード大学院生たちに教える仕事を始めたんですね。それで当時はカルチャーショックもあり、「あれ?」と思うことが多かったんです。その一つが「どうして渋谷の街を企業がマーケティングしているのか」という疑問でした。当時、東急田園都市線に乗ると「エンタテインメント・シティ、渋谷!」みたいなポスターがバーっと貼ってあった。最初、意味がわかりませんでした。それに、なぜエンタテインメントなのか。そこで学生たちと調べてみようと。ハーバードの学生たちも渋谷の街は面白いと思いつつ、大規模再開発の進め方には疑問を持っています。これは世界中の大都市で起こっている現象でもありますが、大資本が都心の広い土地を所有し、再開発することで、道路や空地や公のスペースだったところが私有地化されていく。一見、以前よりも綺麗で便利になりますが、実は拘束だらけの空間に変わるということでもあるんです。学生たちが一番驚くのは、この大規模再開発に反対する動きがないことです。それと、行政による都市開発の長期的ビジョンが見えず、開発業者に任せきりにしているように見えること。例えばニューヨークでは、再開発が完成した後も「パブリックのために作られた空間」がちゃんとそのように機能し、そこで多様性や寛容性が守られる仕組みを行政が作り、公共性の実態を見守っています。東京の場合、開発業者が「こんなパブリックスペースを作ります」と都に提案して大規模再開発を許されますが、寛容性はどうなのか、実際できてみると提案通りになっているのか、疑わしいケースも多いんです。そこを渋谷でも問わないといけないと思います。渋谷の街にはまだ渋谷特有の魅力が残されています。それが消えてしまう前に、再開発の構想のしかたや進め方を議論していく必要があると思っています。

2 : 都市のエフェメラと公共性

渋谷は時間的に
移り変わることを
許容する街だと思う

飯田

かつての渋谷はアートに関しても権威主義的なものではなく、いわゆるサブカルチャーと呼ばれる、自発的な文化が非常に自由に伸びやかに表現されていた街だと思うんですね。PARCOや西武に代表されるような商業資本から派生したものであったとしても、そこに余白があり、自由があった。今展覧会は、そういった渋谷の変遷も追っていきたいと思っています。1970年代から活躍されていた、イラストレーターの山口はるみさんや写真家の繰上和美さんたちの力を借りながら、当時の息吹みたいなもの、空気感を出していきたい。繰上さんは今年88歳で、戦前の景色も見て、戦争を経験し、戦後の焼け跡から始まった東京も知っている方。繰上さんが渋谷に対してどう取り組んできたのか、その痕跡を見せたいと思っています。今展覧会には「エフェメラ」(*束の間の、刹那の)というタイトルをつけていますが、エフェメラを記録するのもアートの役割であるという提示をしたいんです。

太田

渋谷は時間的に移り変わることを許容する街だと思うんですね。私もよく覚えているのは、夕暮れになると駅近くの美竹公園にストリートダンサーが練習しに来ていたこと。すごく上手で、公園に人だかりができて、彼らも余計にやる気を出して踊る。かつての宮下公園にも同じような光景があったし、ある時間になると一時的に街が自由な使い方を許容するというか。若者たちが自分たちの空間を発見して、自主的に使いこなしていった時間の経過があった。それがすごく渋谷らしい面白さだったと思うんですが、大規模再開発をしてしまうと全てが管理された空間になり、いままで育まれた魅力が一気に消えてしまうんです。多様性や寛容性の議論も遠くへ行ってしまう。

飯田

街は、人がコミュニティの中から何らかの活力を生み出していくものだと思います。ですから、人が集まることへの規制は、非常に暴挙だと感じています。確かにハロウィンに集まる人たちは、マナーも良くないし、迷惑かもしれない。けれど、そのエネルギーもひっくるめて街の活力になっていく。規制してしまうのは簡単ですが、それでは何も始まらないですから。70年代に西武や東急の資本が入って来た時に、彼らの考え方の根底には街づくりがあったんですね。単に売上だけを追い求めるのではなく、街づくりに主眼を置いていたはずです。

太田

渋谷を始めとする東京都の大規模再開発の規制緩和は、バブル経済で日本全体が沈み続けている中、なんとか底上げするために2002年に考え出された経済政策でした。「都市再生緊急整備地域」という、いわば規制緩和ゾーンを作り、それまで不可能だった規模の再開発を行えるようにする。今ではビルのスケールや高さが競われるようになり、都市開発による富の集中が加速しています。結果として都心に富裕層は集まってくるかもしれない。けれど、「持たざる」若者や高齢者、社会的弱者はどんどん貧しくなって、端の方に追いやられていく。残念ながら、みんながフェアにシェアできるような都市を作るビジョンは、東京都にあるとは思えません。この状況を変えるには、草の根でこういった話を広げていくことが大事だと思っていて、その点でも今回の展覧会はとても意義あるものだと感じています。

3 : 闇こそ、都市の魅力である

ケの世界を
追放していくと
街が街では
無くなってしまう

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飯田

今展覧会の出展作家である写真家の石川直樹さんは、コロナ禍でどこにも行けなかった時に、誰もいない渋谷を撮影していたんですね。本当に無人でゴーストタウンみたいな渋谷に、普段はアンダーグラウンドにいるネズミが、路上に出てきていた。ドブネズミとクマネズミが交配して、巨大化したネズミが跋扈している渋谷の風景。都市であったとしても、我々の生活は自然環境に支えられていることを明らかにしている。それから風間サチコさんはスクランブル交差点をモティーフとした、木版画の大作を出していただきます。相互監視をテーマに描写している作品です。それぞれ街ゆく人々に背番号を付けてみたり、戦中の言論封殺された状況を盛り込んでみたり、平板化していく街のあり方に対して、批評的に描写した作品なんです。

太田

二人とも非常に鋭いですね。やっぱり、言語化されないまま気づかなかった何かを、そうやって一瞬にしてわからせてくれるのがアートですよね。

飯田

闇や陰の部分の価値や意味を考えさせられます。僕らが幼い頃には、渋谷は気軽に遊びに行ってはいけない場所で、中でも母親から「百軒店には絶対にダメだ」と言われていたんですね。でも、子供の好奇心の怖い物見たさで足を踏み入れると、昼間から飲んでいる人がいたり、青線地帯のような雰囲気が子供にとってあたかも異世界にトランスポートしたかのような感覚を体験したのです。街には、やはりある種の闇というか、ハレとケのうちケの世界が大切で、それをどんどん追放していくと街が街では無くなってしまう気がするんです。

太田

幾重にも層があって、それを一枚ずつ剥いでいくと違う表情が現れる。それが都市の魅力だった。けれど再開発は、空調を行き届かせ、明るい照明によって闇を奪ってしまう。一瞬快適かもしれないけれど、それで何を失ったのか、こうして話をしない限り忘れていってしまう。かつて渋谷の駅前にも赤提灯が連なっている飲み屋街がありましたよね。若い建築家たちもそういう猥雑な場所に率先して行っていた記憶があります。けれど、再開発に関して建築家や都市デザインを専門とする人たちの発言がないのは、非常に問題だと思っているんです。六本木ヒルズができる時には、中堅の建築家たちが様々な反対意見を公にしていたんですが、それが最後でした。どうせ自分たちは再開発に手も足も出せない、という意識から黙っているのかも知れません。でも、彼らにしかできない方法で、問題を指摘したり解決方法を提示したりすることはできるはずなんです。

飯田

それはアーティストについても同じことが言えるかもしれない。1964年の東京オリンピックの際にハイ・レッド・センター(高松次郎・赤瀬川原平・中西夏之)がチームを組織して、オリンピック期間中に「首都圏清掃整理促進運動」と名付けて、白衣を着て街を清掃したのは、汚いところを全部隠そうとする政府の方針を皮肉っていたわけですから。でも今は権威に対して諦めている。絶望感を伴いながら、でも正面から突破するのではなく、いかにかわしながら自分の表現をしていくのか。それが今のアーティストの在り方になっていると思いますね。

4 : 渋谷の未来の描き方

皆で街の
自由を勝ち取って
いくために

太田

都市に存在する曖昧な場所や隙間が、一人でいても気持ちが落ち着いたり、居場所を感じられたりする場所だったりしますよね。ある意味、それが都市ならではの醍醐味だし、懐の深さだと思うんです。かつて民間企業がマーケティング戦略の一端とは言え、人々に役に立つ場所を作ってきたことは確かなんです。だから大企業の活動を全否定はしないけれども、消費しなくても人々自主的に使える自由や可能性も残されて然るべきだと思うんです。私たちが自分たちの権利や希望を国や都や企業に預けたまま、思考停止になっている状態が危ないと思っています。地方では、どうやって街の魅力を高めるかが切実な問題で、官民一体となって東京にはない実験的な試みをしているところもあるんですね。人口減少や高齢化という差し迫った状況だからこそ、東京ではあまり出番のない中堅や若手の建築家も呼ばれています。そして、未来を先取りするような結果も生まれている。一方、東京では開発・建設関係の大企業がデザインの仕事を独占しています。地方で成果を上げている中堅・若手の建築家には、なんとか東京の現状に風穴を開けて、新しい手法やアイデアを東京でも実践してほしいものです。

飯田

かつて東京大空襲の焼け跡から立ち上がった時には、とにかく効率的に経済力を高めなければいけないと邁進してきたわけです。お父さんたちは家や車を買うためにがむしゃらに働いてきたけれど、今の若い人たちはシェアすればいいという感覚ですよね。戦後生まれの人たちとZ世代以降の人たちとの欲望の構造は明らかに異なっているのです。すると街も変わるはずです。アートの世界においても同様で、次の世代に期待しているんです。少しでも改革をしよう、自由になろうという動きの萌芽はありますから。

太田

日本のアーティストたちもいまや国際的な評価にも晒されていて、厳しい反面、以前より解放されている面もあるんでしょうね。日本のアーティストもこれからもっと国際的な文脈の中で表現するようになるのかなと思います。

飯田

今回の出展作家で一番若いアーティスト、1999年生まれの友沢こたおさんは、国内では大スターです。このような若い世代の作家が国内に止まらず、海外でも発信できるようにGYREが国を超えてプロモーションしていけるように戦略を立てております。だからGYREの展覧会を海外へ巡回したいと考え、今後の企画を海外へ巡回できるように準備を進めております。商業的なビルの中での限定されたスペースでの“実験”を、海外の美術館の数倍のスペースで展開できたらと個人的には考えています。

太田

今年6月に亡くなった建築家の槇文彦さんは、都市空間とは大勢の人間のためだけではなく、独りきりでいても安らぎや感動を得られる場所でなくてはならない、そのことを忘れてはいけない、と書かれています。槇さんは戦後の新しい社会を託された世代で、社会的な責任感と情熱をもって豊かな都市空間を作ることに心を砕かれました。今の若い建築家たちも、東北大震災を経て、社会をいかに立て直すかという課題に彼らなりの方法で取り組んでいます。彼らに求めたいのは、社会のシステム自体も変えていこうという意識、そして建築そのものの可能性を広げようという野心です。そのためには、アートを含めた多様なジャンルの人たちとの交流も有益になるはずです。皆で街の自由を勝ち取っていくためには、こうしたどれもが必要なんだと思います。

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未来都市シブヤ_エフェメラを誘発する装置

会場
GYRE GALLERY | 東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
お問い合わせ
0570-05-6990 ナビダイヤル(11:00-18:00)
主催
ジャイルギャラリー スクールデレック芸術社会学研究所
企画
飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所 所長)
PR ディレクション
HiRAO INC
PRESS CONTACT
HiRAO INC|東京都渋谷区神宮前1-11-11 #608
T/03.5771.8808|F/03.5410.8858 担当:御船、鈴木
協力
キヤノンマーケティングジャパン株式会社 / 有限会社キャメル / 高橋龍太郎コレクション / ナンヅカ / 株式会社パルコ / 無人島プロダクション / 株式会社SUNNYES / KNOW NUKES TOKYO + 金達也 / 渡邊英徳教授(東京大学大学院) / 鈴木達治郎教授(長崎大学) / 株式会社STYLY
展示資料協力
石川令子
協力特別
太田佳代子(建築キュレーター)
会期
2024年10月17日(木)-11月29日(金) / 11:00-20:00 / 無休 / 入場無料
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  • 操上和美

    ロンサム・デイ・ブルース

    作家プロフィール

    1936年北海道生まれ。1961年東京綜合写真専門学校卒業。1965年からフリーランスの写真家として活動を始め、ファッション、広告の分野を中心に、コマーシャルフィルムも数多く手掛け、映像表現の世界でもっとも幅広い活動を繰り広げて現在にいたる。1968年大阪万博ポスターを福田繁雄氏と制作。1977年第21回ADC賞受賞。「KAZUMI KURIGAMI PHOTOGRAPHS-CRUSH 」(原美術館)、「操上和美 時のポートレイト ノスタルジックな存在になりかけた時間。」(東京都写真美術館)「PORTRAIT」(Gallery 916)「Lonesome Day Blues」(キヤノンギャラリーS)「April」(takaishii gallery)2008年 映画『ゼラチンシルバーLOVE』 監督作品

  • 山口はるみ

    ビー玉の女

    作家プロフィール

    松江市生まれ、東京芸術大学油画科卒業。西武百貨店宣伝部デザインルームを経て、フリーランスのイラストレーターとして、劇場、映画館、 ミュージアム、レストラン、そしてアパレル店舗を融合したPARCOの広告制作に参加。1972 年よりエアブラシを用いた女性像を描き、一躍時代を象徴するアーティストとなる。

  • 畠山直哉

    アンダーグラウンド

    作家プロフィール

    1958年岩手県陸前高田市生まれ。1984年、筑波大学大学院芸術研究科修士課程修了後に西武セゾングループのインハウス広告代理店であった(株)SPNに拾われ、そこで映像制作業務等にたずさわり始めた頃、上司の泉秀樹氏より、ヨーゼフ・ボイス来日における記録映像制作のディレクターを命じられる。成果は60分のヴィデオ作品《Joseph Beuys in Japan》にまとめられ、その後世界各地で公開された。また録画素材を元にして、ボイス滞日中の全講演を文字化した書籍をセットにしたヴィデオ・ブック《ドキュメント1984 ヨーゼフ・ボイス・イン・ジャパン》が、同年にペヨトル工房によって制作・発行され話題を呼んだ。現在、東京藝術大学大学院映像研究科メディア映像専攻教授(2025年3月退任予定)。主な近年の展覧会に「Natural Stories」(2011-2012 東京都写真美術館、ハウス・マルセイユ写真美術館、サンフランシスコ近代美術館)。「まっぷたつの風景」(2017 せんだいメディアテーク)。「Naoya Hatakeyama – Excavating the Future City」(2018 ミネアポリス美術館)などがある。|Photo : ©buerofuerkunstdokumentation

  • 風間サチコ

    人外交差点

    作家プロフィール

    1972年生まれ、東京都在住。1996年武蔵野美術学園版画研究科修了。現在起きている現象の根源を過去に探り、未来に垂れこむ暗雲を予兆させる黒い木版画を中心に制作。一つの画面に様々なモチーフが盛り込まれ構成された木版画は漫画風でナンセンス、黒一色のみの単色でありながら濃淡を駆使するなど多彩な表現を試み、彫刻刀によるシャープな描線によってきわどいテーマを巧みに表現する。作品は東京国立近代美術館、東京都現代美術館、森美術館、横浜美術館、国立国際美術館、ニューヨーク近代美術館(アメリカ)やクイーンズランド州立近代美術館(オーストラリア)など国内外の美術館に収蔵されている。2019年第一回Tokyo Contemporary Art Award受賞(2019)、ニッサンアートアワード2020ファイナリストに選出(2020)近年の主な展覧会に「第24回シドニービエンナーレ」(ニューサウスウェールズ州立美術館 2024年)「Reborn-Art Festival 2021-2022―利他と流動性―」(石巻、宮城、2021)「Tokyo Contemporary Art Award 2019-2021 受賞記念展:風間サチコ Magic Mountain」(東京都現代美術館、2021)「風間サチコ展―コンクリート組曲―」(黒部市美術館、2019)など。

  • 石川直樹

    STREETS ARE MINE

    作家プロフィール

    1977年東京都生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。2008年『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)により日本写真協会賞新人賞、講談社出版文化賞。2011年『CORONA』(青土社)により土門拳賞。2020年『EVEREST』(CCCメディアハウス)、『まれびと』(小学館)により日本写真協会賞作家賞。2023年東川賞特別作家賞。2024年紺綬褒章を受賞した。著書に、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)、『地上に星座をつくる』(新潮社)ほか多数。主な個展に『Vette di Luce. Naoki Ishikawa sulle Alpi Orobie』アカデミア・カッラーラ美術館(イタリア/2023)、『JAPONÉSIA』ジャパンハウス サンパウロ、オスカーニーマイヤー美術館(ブラジル/2020-2021)、『この星の光の地図を写す』水戸芸術館、新潟市美術館、市原湖畔美術館、高知県立美術館、北九州市立美術館、東京オペラシティアートギャラリー(2016-2019)

  • 友沢こたお

    slime

    作家プロフィール

    1999年フランス、ボルドー生まれ。スライム状の物質と有機的なモチーフが絡み合う独特な人物画を描く。シンプルな構成ながら、物質の質感や透け感、柔らかさのリアルな表現が見る者に強い印象を与える。東京藝術大学美術学部絵画学科油画専攻で学び、2019年度久米賞受賞、2021年度上野芸友賞受賞。近年の個展に、「INSPIRER」(Tokyo International Gallery、東京、2022)、「SPIRALE」(PARCO MUSEUM TOKYO、東京、2022)、「Monochrome」(FOAM CONTEMPORARY、東京、2022)、「caché」(tagboat、東京、2021)、「Pomme dʼamour」(mograg gallery、東京、2020)、グループ展に「Everything but(Tokyonternational Gallery、2021)などがある。