Life is beautiful : アウトサイダーアート展 Our Life is Our Art そしてその先へ=「THE WORLD」

アウトサイダーアート展
Our Life is Our Art
そしてその先へ=
「THE WORLD」

2021年6月7日(月) - 7月25日(日)

3.11 そしてコロナ禍を体験した私たちは、自然に対して、人間が作り上げた現代文明がいかに非力であるかを知りました。それでも、テクノロジーは進み、グローバリズム信仰は止まりません。そんな今、私たちはどのような歩みを進めていくべきでしょうか。「Our Life is Our Art=人生はアートだ」ジョン・レノンが残したこの言葉は、生き物としての人間が、如何に生きるべきかを端的に語っています。
Outsider Art と言われる分野の、当会場における3回目の開催となる本展は、現代社会においては不自由とされる障がいのある人たちが生み出す多様な表現を通して、人が生きることの意味や、本当の幸せとは何かを問う展覧会です。障がいのある人が生み出すアートは、人が生まれながらにして持っている、根源的な生命力を感じさせます。人は表現することで思いを伝え繋がり、そして助け合うことで命を紡いできたのではないのか。それは、自然の一員として持続可能な未来をつくる上で、私たちに大きな示唆を与えてくれます。私たちは、社会や、文化や、自身の身体性について、あらためて考えを深めたいと思います。
過去の展覧会同様、今回も、北は北海道から南は九州まで、全国の福祉施設に主催者自らが足を運び、29名の作家との交流を経て厳選したアートをご紹介いたします。さらに今回は、私たちが次のステップとして考えている、アートを超えた「生活の場」を創る実験的プロジェクト「THE WORLD」についてもご紹介致します。

展示作品・作家紹介

  • 「月下美人と黒出目金」 2019

飯塚月 (1997-)

studioCOOCA

彼女は物心つく頃には既に絵を描くのが好きでした。
絵を描くことは彼女にとって、心の隙間を埋める唯一の表現方法です。
2014年7月頃から蜂を描き始め、以来蜂を描き続けていましたが、徐々に視野が広がり、
蜂の巣のように隙間だらけだった彼女の心は広がり始めました。
「私の描く作品が、誰かの心の隙間を少しで埋められたら。」と願っています。

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  • 「夜空から見た大都会」 2009

松本寛庸 (1991-)

2〜3歳の頃から絵を描き始め、3歳で高機能自閉症と診断されました。
幼児期から学童期は、特に生き物(魚、昆虫、動物など)、宇宙、歴史等に興味関心があり、 図鑑や歴史書を読むことが好きでした。
現在も読書は好きで、図書館や書店に行くのが好きです。
彼の作品は、その時の興味や関心を反映したものが多く、自分の考えるイメージに変えて描きます。
色鉛筆も300本、水性ペンも100本ほどの中から迷うことなく色を選びます。
定規や消しゴムや修正液などは一切使わず、緻密で繊細で色彩豊かな作品が多いです。

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  • 「K3」 2021

加地英貴 (1992-)

アトリエライプハウス

重度の自閉症の彼には、日常生活において様々な「こだわり」があります。
美術教室に通い始めて11年。色鉛筆を紙に走らせることもその「こだわり」のひとつですが、
ある時から綺麗に均一に画面を塗り込めて描くようになり、色彩も均整がとれ、
彼なりに考えて絵画を制作しているのだと理解することができます。
しかし、自閉症特有の「こだわり」はあります。
それは、色鉛筆や鉛筆を同じ短さになるまで使いそろえることです。
彼にとって作品制作をすることと、鉛筆を同じ長さにそろえることは、同じくらい重要であり、彼にとってはどちらも作品なのかも知れません。

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  • 「花がらの服の女」 2018

茶薗 大暉 (1994-)

アトリエライプハウス

自閉症の彼は、幼少の頃、多動であった彼に父親が絵を描く事を教えてから、絵を描くようになりました。
絵を描き始めた頃は、仏像や歌舞伎の絵を描いていましたが、 数年前からファッションに興味を持つようになり、ランウェイを歩くモデルの絵を描くように。
独特のセンスとモードの洗練さが交わり、彼にしか描けない線描、 モデルの揺らぎをパステルで表現しているのが魅力の作品です。
彼は、プロの画家になる夢を持っています。
彼自身もたいへんオシャレで、作品が売れるとその収入でブランドの服を購入します。
それが制作するモチベーションのひとつになっています。

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  • 「無題」 2019

かつのぶ (1992-)

アトリエライプハウス

自閉症の彼は、中学二年生の時に美術教室来て油絵を始めました。
その頃から最近まで、様々な色彩のグリッドを幾重にも塗り重ねる作品でした。 最初に横方向に塗り、絵具が乾けば縦方向に塗ります。
そのため作品の表面にはボコボコとしたマチエールが形成され、光の加減によっては、まるで縦横に編まれた麻布のように見える作品でした。
最近はボーダー柄の作品に変化してきました。
ボーダー柄の横線を描くのではなく、先に塗った面の上部を線として塗り残しながら、面を塗って行く方法でボーダー柄を描いています。
そのため作品の下部へ行くほど絵具の厚みが増して行きます。作品の横から観ると色彩の重なりがよく解ります。
彼の作品は、グリッドからボーダーの作品へと、ゆっくり変化をして来ました。 その変化は画家としての進化の変遷を表しています。
  • 「積み木」 2020

山根由香 (1977-)

アトリエライプハウス

ダウン症の彼女は、15年以上絵画教室に通い絵を学んできました。
その頃の作品は、デザインマーカーや水彩絵具を使い四角や三角を紙にゆっくりと丹念に塗り分けて描いていました。
ひとつの作品が仕上がるのに一年近くかかることもありました。
現在は、アート活動を専門とする福祉施設で制作していますが、作風が変わり以前のようなグリッドを描くのではなく、
ランダムな筆運びの作品となり、作品に開放感が生まれました。
たくさんの色を塗り重ね、鮮やかな色彩と深みのある色彩が混在し、不思議な奥行き感がある絵画空間が作品の魅力です。

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  • 「つばめ」 2020

有田京子 (1990-)

YELLOW

2009 年 YELLOW で制作活動を始め、2010 年頃から点描をはじめる。
絵のモチーフは色々なパンフレットや図鑑を見て描くものを決めている。
ユーモアに溢れ、作業所のムードメーカー的存在だが、作品制作に向かう際は驚くべき集中力を発揮する。
描かれるモチーフは、身の回りのモノや季節のものの他に、悪戯心が現れたモチーフも登場する。
それらを点描によって描くのだが、点描は年々細かになってきている。
またモチーフ(図)だけでなく、背景(地)の色分けも工夫され、その上の点描による色彩効果が加わり、複雑で重層的な作品が生み出される。
集中力と持続性によって生み出される高い密度の作品だが、どこか作家の人柄を映すような温かみとユーモアも兼ね備えている。

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  • 「動物」 2013

吉田幸敏 (1955-)

かたるべの森

平成6年かたるべの森開所当時からのメンバーです。
丁寧に塗られた、ユーモラスな生き物の絵。雑誌や写真集を見て、さまざまな動物や、人、 景色などをモチーフとして選んで描いています。
モチーフの形を辛うじてとどめながら描かれる画面には不思議な空間が現れます。
描きたいという強い気持ちがハンディを乗り越えさせ、 絵を描く行為そのものに慈しみをもって行う。
そうして、生まれてくる作品は見る側に優しく寄り添い、勇気を与えるように思えます。

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  • 『「徹子の部屋」をみる徹子』 2017

XL (1967-)

NPO法人スウィング

1967年生まれ。2006年より「NPO法人スウィング」に所属。
中学卒業後、左官屋に就職するも激しい「いじめ」にあい速攻で退職、推定15年に及ぶ引きこもり生活を経験する。
芸術創作活動「オレたちひょうげん族」、京都人力交通案内「アナタの行き先、教えます。」等、多方面に渡ってスウィングの「仕事」を中心的に牽引中。

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  • 「無題」 2014

カグラタニ (1971-)

NPO法人灯心会

常に自分の興味のあるものにアンテナを張っており、興味あることを形にしたいという思いは強く、
油絵、水彩画、デザイン、オブジェなど、興味の赴くままに作品を作っていく。
いくつもの作品が同時進行で制作されており、アトリエには制作途中の作品が多くある。
  • 「抱いている人」 2014

井上優 (1943-)

やまなみ工房

滋賀県在住 1999年から『やまなみ工房』に所属 
彼が本格的に創作活動を始めたのは60歳を迎えた頃だった。
何事にもまじめに取り組む彼は、人物や動物、風景等をモチーフに、鉛筆のみで身丈を越えるほどの大きな作品も、
一日3時間、約3週間の期間をかけ丁寧に塗り込み完成させる。
彼に会いに多くの人々が訪れ、自分の描いた作品が評価される。きっと彼自身が一番想像すらしなかった事だろう。
しかし今夢中になれる活動に出会えたことが日々のやりがいや喜びとなり、生き様を残していくかのように彼の手で次々に作品を作り上げていく。

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  • 「John & Shino」 2021

前野一慶 (2002-)

まつさかチャレンジドプレイス 希望の園

2015年からアトリエ「HUMAN・ELEMENT」にて制作を始める。
興味ある人物と関心のある世の中の出来事に空想を混ぜ合わせた世界を表現している発達障がいのアーティスト。
油性マジックペン等を使いカラフルに描いていたが、2019年から油彩でも制作している。
2017年「★バイタリ!松阪人ショー2017~世界でいちばん熱い2月~」ポスターに採用される。
第15回キラキラっとアートコンクール優秀賞。2020年「第1回アートパラ深川大賞」厚生労働大臣賞受賞。

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  • 「無題」 2020

岡部志士 (1994-)

まつさかチャレンジドプレイス 希望の園

2013年から『まつさかチャレンジドプレイス 希望の園』に所属
クレヨンを塗って面を創り、色を消すようにニードルで削ってできたクレヨンのカスを集めて、粘土のようにして遊びながら作品を創る。
ボードやキャンバスに、 クレヨンにポスターカラーを加え着色した面をニードルで削る制作方法もある。
実はその削りカスを集めてできたかたまり(本人はコロイチと呼んでいる)こそが本人にとって本当の作品であり、
結果としてできた絵画はただの削り残したカスであり興味はない。
三重県をはじめ、東京、大阪、名古屋、スペイン(バレンシア)などでのグループ展にも参加。
2014年ボーダレス・アート・コレクション「芸術がほどいてゆく境界」(高浜市やきものの里かわら美術館 愛知)出品、伊勢市と名古屋市で個展を開催している。

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  • 「スリラー」 2014

大峯直幸 (1977-)

工房まる

20歳の頃、当時入所していた施設で絵を描き始める。
黒マジックのくっきりしたラインは、不随意運動を力で抑え込むことで生まれる。
二の腕に内出血ができるほど全身に力を込めて、筆先の繊細な動きをコントロールする姿と、画用紙に刻々と浮かび上がるイメージには、
思わず息をのみ引き込まれてしまう。
2019年に設立されたユヌス・ジャパンのロゴマークを制作。

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  • 「後悔と夢」 2020

石井悠輝雄 (1980-)

工房まる

福岡市在住。2010年より「工房まる」に所属。奈良芸術短期大学専攻科日本画コース修了。
写実的な描写からユーモアのあるイラストまで、幅広いタッチの絵を描きわける。
児童書の挿絵や、福岡ソフトバンクホークスの公式グッズに採用されるなど、イラストの仕事が年々増えている。
2016年には、天神地下街40周年の記念モニュメント作品「Relier(ルリエ)」の原案を手掛ける。
出展作家29名

GOMA, 平野喜靖, 鈴木靖葉, 加地英貴, 茶薗大暉, かつのぶ, 山根由香, ミルカ, 有田京子, りくと, 南部たき, 吉田幸敏, 岡部志士, 前野一慶, 渡邉あや, 大峯直幸, 石井悠輝雄, XL, 女良明日香, 飯塚月, 岩本義夫, 横溝さやか, 水野貴男, カグラタニ, 澤田真一, 紺谷彰男, 井上優, 中尾涼, 松本寛庸

参加ギャラリー

Abigail(大阪), Atelier Bravo(九州), アトリエライプハウス(大阪), YELLOW(大阪), かたるべの森(北海道), 希望の園(三重), 工房集(埼玉), 工房まる(九州), Swing(京都), Studio COOCA(神奈川), 灯心会(岡山), 栗東なかよし作業所(滋賀), やまなみ工房(滋賀)

「THE WORLD」

一般社団法人Arts and Creative Mind は、2022年春、
北海道十勝に社会包摂型アートスペース「THE WORLD」をオープンします。
2014年からはじまった活動を通して、多くの障がい者作家や家族と出会い、
彼らが共通して抱える暮らしへの不安を目の当たりにしてきました。
しかしそれは、障がい者に限った話ではありません。
コロナを経て社会の分断はますます広がり、単に経済的に困窮するだけではなく、
恵まれない側の人たちは大きなストレスを抱えています。
そんな中、どんな人も人間らしく幸せに生きられる場所は世界中で求められています。
障がいのある人もない人も自由に自らを表現するアートスタジオ。
生まれた作品を展示するためのアートギャラリー。
生きる糧となる作物もいずれは自分たちで育てたい。「THE WORLD」は、自然の恵みを頂きながら、
内外の人々が有機的に繋がることで持続可能となります。
私たちは、アートを軸に新たな文化を創り育て、その価値を世界に向けて発信して参ります。
新生「THE WORLD」に是非ご期待ください。

アウトサイダーアート展
Our Life is Our Art
そしてその先へ=「THE WORLD」

会期
2021年6月7日(月) - 7月25日(日) / 11:00 – 20:00
会場
GYRE GALLERY丨東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 3F
CONTACT
03-3498-6990 (GYRE)
共催
一般社団法人Arts and Creative Mind + GYRE
展覧会総合キュレーター・プロデューサー
杉本志乃(一般社団法人Arts and Creative Mind 代表理事)
アートディレクション
ヒロ杉山+Enlightenment
写真・映像
逢坂芳郎
協力
HiRAO INC, 株式会社TRiCERA・十勝毎日新聞社・北海道共働学舎新得農場・ムトカ建築事務所
助成
はるやま財団
Press Contact
HiRAO INC|東京都渋谷区神宮前1-11-11 #608
T/03.5771.8808|F/03.5410.8858
担当:御船誠一郎 mifune@hirao-inc.com

トークショー
「SEE Nothing, HEAR Nothing,
SAY Nothing → 公然の格差社会へ!」

日時
7月19日(月)THE WORLD(ACM Gallery)YouTubeアカウントにて公開開始予定
*7月17日(土)のギャラリーオープンは13時となります。
登壇者
長谷川眞理子( 総合研究大学院大学学長・進化生物学)× 奥田知志(NPO法人抱樸代表)